結婚しようよ
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有名すぎて、長い間漠然と敬遠していた。
僕らの世代のパブリックイメージで、
吉田拓郎の「結婚しようよ」と言えば、
ロン毛に、ベルボトムに、白いギター。
70年代フォークブームを象徴するヒットソング
といった感じの古臭いイメージ。
若い頃はそんな曲に特に興味をもつこともなく、
30歳近くになって、
高田渡あたりから「日本のフォーク」にも徐々に興味を持つようになり
普通に吉田拓郎の作品を聴くようになっても、
「結婚しようよ」は特に意識することもなく、
逆に有名曲過ぎて、なんとなく敬遠していた。
アレンジがめちゃめちゃラスティック
ところがある日、
ふと、気になってあらためて聴き直してみると・・・。
あまりに良すぎてビックリ!
「アハ体験」かのように、
知っているつもりの超有名曲のこれまでと違った一面が
急に見えてきて、脳内が活性化されいく感じ。
まず、
演奏のアレンジがいわゆる「日本のフォークソング」の感じではなく、
カントリー / ブルーグラス / トラッド / ヒルビリー などを連想させる
アイリッシュ音楽好きにもそのままお薦めできるような、
とっても良さげなラスティックだった。
まさか日本のスタジオミュージシャンが、
70年代初頭に、こんな洒落た音を鳴らしていたなんて
思いもよらず本当に驚いた。
まさかのメンツ
この時代にこんなに素敵な演奏をしてた人達は
いったいどんな人達だったんだろうと、
クレジットを見てみると「編曲:加藤和彦」となっている!
えー!そうなのー!
有名な話なのかもしれないが、
今更ながらはじめて知った衝撃は大きかったー。
気になって、色々ググってみると
ギター:加藤和彦
ベース:小原礼
ドラム:林立夫
ハーモニウム/バンジョー:松任谷正隆
これまた、とんでもないメンツ。
このレコーディングの為に、加藤和彦が集めたメンバーらしく
この時、加藤和彦は24歳、ほかの3人は20歳だったそうな。若い!!
しかも松任谷正隆はこれがはじめてのレコーディングだったようだ。
この後すぐに、
加藤和彦と小原礼はサディスティックミカバンド
松任谷正隆と林立夫はティンパンアレーと、
これまた伝説的なバンドになっていく。
なんだか凄いタイミングでの
凄いメンツでのレコーディング。
「歴史の1ページ」感が半端ない。
コピーライティング的歌詞がまた良い。
そして、吉田拓郎はこの曲を
「ヒットさせようと思ってつくった」というのがまたすごい。
そう言われて、聴いてみると演奏だけでなく
歌詞の方も冒頭から「僕の髪が肩までのびて」など
コピーライティング的なキラーフレーズ満載で、
あの「ほのぼの」とした世界観は、
実は緻密な戦略に裏打ちされていることが分かる。
そんな歌詞の中でも
「もうすぐ春が ペンキを肩に お花畑の中を 散歩に来るよ」
というフレーズを聴いた時に、心底感心した。
春とか、ペンキとか、お花畑とか、散歩とか
単語1つ1つは、とてもありきたりで
一見、陳腐に聞こえなくもないが、
冬枯れしていた野原が、あっという間に、一面鮮やかな花に覆われる情景が、
まざまざと目に浮かぶ。
この描写力がものすごい。
へたな画家が描いたお花畑よりも、
この1フレーズで浮かぶ「お花畑」の方が何倍も鮮烈な気がする。
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