江利チエミのテネシーワルツ

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(C)キングレコード

オリジナルを超えた、稀有な日本人歌手のカバー曲

昨今では綾戸智絵さんの演奏でおなじみのテネシーワルツですが、
名曲なので昔からとても多くの著名なアーティストが歌い継いでいます。

パティー・ペイジ、コニーフランシス、サム・クック、
エルビス・プレスリー、オーティス・レディング、ジェームスブラウン、
トム・ジョーンズ、ノラ・ジョーンズ、美空ひばり、フランク永井 etc…

そんな、錚々たるメンバーが残した数多くのカバーの中でも
僕が是非おすすめしたいのが「江利チエミ」版のテネシーワルツ。
これ間違いありません。
きっと、賛同してくれる方も多いはず。

演奏も歌唱も抜群で、
一般的にオリジナル扱いされる
パティー・ペイジ版にまったくひけをとりません。
いや、こっちの方が断然イイ。

上質の3分間がそこにある。

昭和の洋楽のカバーは大抵、
まるっと日本語の歌詞に置き換わってますが、
このテネシーワルツは、
どういうわけか歌詞の半分だけが日本語になっています。

でも、この半分というのが「ミソ」。
原曲の雰囲気をそのままに、
ストーリー(歌詞の意味)が分かるので
感情移入がしやすく、より「ぐっと」きます。

また、日本語歌詞部分の雰囲気がなんともよく、
演歌や民謡に通じるような、
日本独特の哀愁がうまくブレンドされ
最高の仕上がりになっていると思います。

ほっとするような、
懐かしいような、
それでいてどこか物悲しく、
だけども愛にあふれていて優しい・・・。

ひことでは言いあらわせない
なんともいえない心地よさと侘しさ。
上質の3分間がそこにあります。

高倉健とテネシーワルツ

健さんファンには有名な話ですが、
「テネシーワルツ」は江利チエミさんの代表曲です。
そしてチエミさんは健さんが唯一結婚した相手で、
健さんが生涯愛した女性です。

二人の結婚生活はトラブルに見舞われ、
チエミさん身内の金銭問題などによって、
健さんにこれ以上迷惑はかけれられないと、
江利さんからの申し入れで
二人は望まぬ離婚をすることになります。
そして、チエミさんは
その後45歳の若さでこの世を去ってしまいます。

1999年の健さん主演の映画「鉄道員」の中で、
健さん演じる「乙松」と妻の静枝(大竹しのぶ)が、
ふと、鼻歌を口ずさむシーンがあります。
そのときの曲がテネシーワルツです。

健さんファンであれば、
このシーンで「あ!テネシーワルツだ!」とみんな思ったことでしょう。

後から何かの本(たしか「鉄道員」の映画本だったと思う)で
紹介されていた撮影秘話によると、

健さんから降旗監督に、
乙松と静枝の二人の絆が分かるような、
何かさりげない演出があった方がいいんじゃないか・・・。
例えば二人の思い出の曲を口ずさむとか・・・。
といった提案があったそうです。

そして、例えばどんな曲?と聞かれた健さんは
僕の場合は「テネシーワルツ」と答えた
というようなことが書かれていました。

それを読んで、僕は号泣しました。
そんなエピソードを知って、
あらためてチエミさんのテネシーワルツを聞いてみると、
まるで、二人のことを歌ってるようで、またなんとも切ない・・・。
本当にいい曲です。

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